思春期の究極のリアル|少年期の脳みそ【ENBUゼミナール】

THEATRE

今回は『カメラを止めるな!』の製作元として有名なENBUゼミナールという演劇学校の卒業公演を観劇して来ました。

人気YouTuber『水溜りボンド』の後輩であるキイチこと石川貴一さんが出演しているとのことで行ってまいりました。

演劇学校の生徒さんといえど、クオリティーは決して低くなく、観劇後の満足度は高かったです。

この記事はネタバレを含みます。ご注意ください。

作品の基本情報

少年期の脳みそ

主催:ENBUゼミナール

作・演出:玉田真也(玉田企画)

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あらすじ

ある高校の卓球部の夏合宿。

その合宿には、高校に入ったばかりの1年生、卒業を控えた2年生、顧問の先生やOBの大学生などが参加していて、一つの時間を共有している。

その様子を隙間から覗いているうちに、それぞれの関係や抱える葛藤などが、徐々に明らかになっていく。

旅館に集う高校生たちの一夜を描いた群像劇。

公演日程・劇場

日程

2020年2月14日(金)~2月16日(日)

観劇日

2020年2月14日(金) 15:00(CAST A)

劇場

下北沢 小劇場 B1
〒155-0031
東京都世田谷区北沢2-8-18北沢タウンホール地下1階

キャスト(敬称略)

■CAST A
丸山有羽
櫻井成美
サカモトミノリ
金子翔
菜奈
石川貴一
竹田洋平
津久井瑠音
みっく

■CAST B
高橋リナ
安田茉央
池谷昌美
三浦希一朗
相根優貴
舛岡瑛介
乙野大地
野口真見
うをとも

スタッフ(敬称略)

舞台監督 : 杉山小夜
舞台美術 : 中野華子
照明 : 井坂浩
音響 : 池田野歩 / 栗原カオス
宣伝美術 : うをとも
製作 : 佐藤伊織 / 高木那菜 / 安田茉央

感想

 

この作品は、玉田企画主催で2014年に初演、2017年に再演を迎えた作品となります。

今回、玉田企画玉田真也さん自身が演出を担当し、ENBUゼミナールの生徒さんたちが演じています。

玉田企画さんの初演・再演は観劇できていないのですが、ENBUゼミナールの生徒さんたちのフレッシュな演技との親和性は高かったように思えました。

玉田企画さんの既存の作品ということもあり、作品としてのクオリティーはもちろん高い上で、生徒さんの演技のレベルも決して低くはなく、フレッシュな空気感だけを残したまま、しっかりとした完成度の芝居を見せてくれました。

いい意味での不快感・嫌悪感

この作品、結論から言うと最後まで大きな出来事は何も起きません。
途中で細かい出来事は起こりますが、最後まで煮え切らないまま終わります。
思春期の日常ってこんなもんだよね、と言うリアルを忠実に描いている作品だと思います。

その中で、所々観ている側をイラッとさせたり、不快にさせる部分もあります。
もちろん、作品批判ではなく、演出上そう仕向けているであろう部分であり、受け手の感情としては正しいものだと思っています。

 

中でも不快感が強かったのは、櫻井成美さん演じる里中さんの誕生会で、金子翔さん演じる津田くんが、周りに促されて無理やり里中さんに告白させられるシーンです。

はじめは里中さんに彼氏がいないから告白しよう、という流れだったのですが、津田くんの告白が終わらないうちに里中さんに彼氏がいることが発覚します。

津田くんの告白の途中にもかかわらず、周りは里中さんの彼氏がどういう人なのか、という方に話題が持ちきりになり、津田くんはどうしていいのかわからないまま立ち尽くします。

何が怖いって、観ている側はすでに里中さんに彼氏がいることを知っている(しかもその場にいるOBの先輩)ので、こうなることは最初からわかっていたんですよね。

津田くんの感情が観ている側にも伝わって来て、すごく嫌な空気が流れるシーンでした。

でも、里中さんは決していたずらに隠していたわけではなく、その場にいるOBの先輩と交際しており、バレたら面倒なことになるのがわかっていたから黙っていただけなんですよね。

で、これだけみんなに聞かれちゃ答えないわけにはいかない、ということでこの流れになってしまう、という非常にリアリティのあるシチュエーションでした。

謎の男手塚

今回の作品、全体的にリアリティが非常に高い中、異物感を与えていたのが菜奈さん演じる手塚くんという存在でした。

一人称はお↑れ↓という謎のイントネーション(実は私の地元の訛りもこのイントネーションでした。。笑)、お風呂上がりでも常に若干オーバーサイズな学ラン姿、そして何より女性が演じているという謎キャラの極みである手塚くん

正直私は男性役を女性が演じる、という構成はあまり好きではありません。
ですが、今回はそこまで違和感なく観れたのは何故だろうと考えました。

よく考えてみると今回手塚くんを演じた菜奈さん、決して男を演じようとはしていなかったんですね。

あくまで「手塚くん」を演じているだけで、男になろうとはしていなかった、というのがポイントだと思います。
まぁ手塚くんという不思議なキャラクターだからこそ為せる技だとは思いますが笑

 

作中で彼の存在に助けられたのは、前述の誕生会のシーンでした。

周りが里中さんの彼氏の話題で盛り上がり、津田くんが立ち尽くしている中、手塚くんだけはずっと津田くんを見つめていました。

普段から津田くんと仲のいい手塚くんは、こんな扱いを受けている津田くんを心配そうに見つめ、最後は津田くんの言動を馬鹿にするような発言をした後、急に壊れたように大笑いするという謎の行動に出ます。

自分が変な行動をすることで注目を自分に集め、津田くんの負担を減らすという、不器用な彼なりのフォローだったのかな、とも思えました。

 

彼の存在がいたからこそ、ただ忠実にリアルを描くだけではなく、フィクションとしての刺激があり、最後まで飽きさせない作りになっていた、重要なポジションだったと思います。

小池先生の配役の絶妙さ

今回、冒頭にも書いた通り、石川貴一さんが出演するということで観劇しています。

水溜りボンドさんの動画で普段からキイチくんのことを観ていた私としては、それなりに彼の人柄を知った上で観たのですが、当て書きなんじゃないかというくらいハマり役だったと思います。

後輩キャラのイメージが強い彼が今回は先生役ということで上に立つ役になりましたが、津久井瑠音さん演じる林田さんという先輩OBがいるおかげで、絶妙な後輩感も出ていました。

何度も話題に挙げている誕生会のシーンでは、盛り上がりが一通り落ち着いた後、そっと津田くんのそばに寄り添ってあげていたのが、キイチくんの人柄もよく出ていて印象的でした。

彼はふとした時に見せる表情が魅力的なところでもあると思うので、今回のように舞台と客席が近い作品は相性が良かったと思います。

その他、全体的にハマり役な配役が多かったので、キャスティングが絶妙だと感じました。

最後に

正直演劇学校の生徒さんの卒業公演ということで、あまり期待値は高くなかったのですが、想像を上回る内容でした。

序盤は「大丈夫かな?」と感じさせるところもありましたが、次第に上がって来たので、安心して観ることができて良かったです。

今回卒業する生徒さんたちの今後のご活躍を祈って、今回は締めたいと思います。

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