コロナ禍でなかなか演劇も観に行く機会が減ってしまった今、皆様はいかがお過ごしでしょうか。
当ブログもずっと更新が止まってしまっており、最後の感想記事から約一年が経過してしまいました。
一年ぶりの観劇は、客入れも50%になっていたりと、様相が随分と変わってしまっていましたが、内容は面白いものでしたので、久しぶりに感想を綴りたいと思います。
作品の基本情報
WORLD〜Change The Sky〜
主催:舞台「WORLD」製作委員会(Ask/サンライズプロモーション東京/ぴあ)
企画:古河 聰
脚本・演出:菅野臣太朗
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あらすじ
2021年 生温かい雨が降る深夜の東京
派出所で第二当番中の警察官が、何者かによって殺害された。大量の返り血を浴びたはずの犯人の痕跡は、鈍く降り続けている雨によって洗い流されてしまった。「レインコートの男」と称される犯人の行方を追う警察と、憎しみに満ちた瞳を持つ女性。そして夜が明けても止むことのない雨の中、二人目の犠牲者が発見される。
2003年 冷たい雨が降る深夜の奥多摩
孤児院で残業勤務をしていた保育士が、恋人よって殺害された。第一発見者でもあるこの男は、近くの派出所に勤務する地域警察官だった。何度も求婚を断られ暴走した独占欲を抑える事が出来ず、男は衝動的に手をかけてしまった。気の遠くなる様な18年を、壁と生きてきた男は、今もなお愛しい女の影を追いかけている。
そして夜が明けても止むことのない雨の中、「レインコートの男」に近付いていく。生暖かくも冷たい雨が降った中で起こった二つの殺人事件。この二つの事件が一人の男によって繋ぎ合わされた時、世界は音を立てずに崩れ去っていく。
今、私達が生きているこの世界は、生き抜く為に対応するほどの価値があるのだろうか? 今、私達は生きている理由が分からないまま、この混沌とした世界を生きていていいのだろうか?
「いつか変わるだろう」「誰かが変えてくれるだろう」に嫌気がさした…。矛盾と不条理のこの世界を変えようとした人間たちの物語。
公演日程・劇場
日程
2021年6月27日(日)~7月4日(日)
観劇日
2021年7月3日(土)
劇場
なかのZERO 大ホール
〒164-0001
東京都中野区中野2-9-7
キャスト(敬称略)
校條 拳太朗 | 杉江 大志 | 佐々木 優佳里(AKB48)
田中 稔彦 | 小笠原 健 | 柏木 佑介
山木 透 | 伊阪 達也 | 武田 知大
川口 直人 | 川名 浩介 | 國島 直希
柴 小聖 | 鎌田 亜由美
坂元 健児 | 水谷 あつし
藤原 習作 | 渡辺 慎一郎 | 武智 健二 |吉田 晃太郎
渡辺 裕之
金山 一彦
及川 崇治 | 畑中 陽道 | 池田 彰夫 | 佐藤 佑樹 | 古川 貴大
塩見 奈映 | 太田 彩香 | 吉村 冴加 | 青木 素姫
スタッフ(敬称略)
脚本・演出 : 菅野 臣太朗
音楽 : 野田 浩平
舞台監督 : 田中 翼(capital inc.) | 中西 隆雄
美術 : 青木 拓也
音響 : 門田 圭介(K-2sound)
照明 : 糸賀 大樹(aqua)
衣裳 : 西田 さゆり
ヘアメイク : コウゴ トモヨ
演出助手 : 苅羽 悠(Ask) | 土肥 麻衣子
演出部 : 高庄 優子 | 金子 裕明 | 三津田 なつみ
美術アシスタント : 西山 美咲
音響オペレーター : 塩澤 宏光 | 鯨井 拓実 | 高山 紋野
照明オペレーター : 安達 明香(aqua) | 市原 詩奈子 | 茅野 美穂
アクション指導 : 吉田 晃太郎(Ask)
衣装進行 : 長沼 真美 | 飯塚 恵美
ヘアメイク進行 : 中山 美穂 |久木山 千尋
小道具 : 松橋 成美(capital inc.) | 高津装飾美術株式会社
大道具 : 東宝舞台株式会社
運搬 : 帯瀬運送株式会社
特殊効果 : 有限会社インパクト
制作・当日運営 : 倉重 千登世 | 亀岡 知子
現場制作 : 椎木三奈(Ask) | 平松 あや
収録 : 有馬 顕(エル・エー) | 石井 聡(エル・エー)
メイキングカメラ : 奥田 真悟
宣伝美術 : 細見 龍司
宣伝カメラマン : 角田 勇太
キャスティング協力 : 片山 依利 | 金森 晃二
票券 : 榎本 育美(サンライズプロモーション東京)
アシスタントプロデューサー : 条谷 知美(サンライズプロモーション東京) | 板橋 明久(Ask) | 大林 計隆(ぴあ) | 熊田 ゆり子(ぴあ)
プロデューサー : 古河 聰(Ask) | 松崎 聡(サンライズプロモーション東京)
感想
今回の作品ですが、株式会社Askさんが主催として2013から公演しており、今回3度目となります。
どうやら内容は毎回ガラリと変えているようなので、初見でも問題なく楽しむことができました。
廃墟の柱を十字架に見立てた舞台美術
大掛かりに作られた今回の舞台美術ですが、基本的には廃墟になった孤児院をモチーフにしています。
二階部分は建物の柱が並んでいるのですが、冒頭の楓先生のお墓参りをするシーンでは一番下手の柱を十字架に見立てた演出がされていました。
その時点で、素敵な美術の使い方をするなぁと感動していたのですが、途中で相沢夫婦のマイホームがその十字架の前で描かれていることに気づきました。
これはたまたまなのか、意図したものなのか、考えながら見ていたところ、蓋を開けてみれば顕示もまた大きな十字架を背負っていることに気がつきます。
幸せな家庭を夢見ながら、一人心の中で龍司や久留美と同様に十字架を抱え続けていた顕示、この十字架に気づいたことで終盤で崩壊した顕示の心の苦しみに深みが増す演出でした。
本水で2時間以上降り続いた雨
記事のタイトルにもある通り、舞台美術の背景では本水で雨が降り続いています。
冒頭一瞬止むシーンはあるのですが、そこからラストまで2時間以上常に降り続いています。
おそらくスピーカーでも雨音を出しているのか、後ろからも聞こえてきて、途中で実際に外で雨が降っているのかと本当に勘違いして、帰りの心配をした瞬間がありました笑
雨は神様の涙、という表現がよく使われますが、降り続く雨が18年前の事件に囚われた人たちの心の涙をよく表現しており、常に陰鬱な空気が漂っていたように思えます。
舞台上で行われる刑事ドラマ
今回、全体的に映像芝居で構成されている印象を受けました。
所々舞台芝居と映像芝居が混在している部分はありましたが、全体的には映像芝居で一貫しようとしている意図が感じられます。
最初の被害者である野上が殺された際には、暗転した後にシートが被せられ、そのまま現場検証のシーンに移る等、舞台ならではの場転演出が入りながら、現場検証ではドラマさながらの芝居がなされており、芝居の質的にまるでテレビの刑事ドラマを舞台演出で見ているような、独特な世界観が広がっていたと思います。
(個人的にここの場転がすごく好きでした笑)
最後に
約一年ぶりに観劇しましたが、入り口での検温・客入れのキャパ・面会無し等、環境の変化を大きく感じた一日でした。
今回の作品、本来であれば一年前を予定していたようで、一年越しでの上演となります。
演者・スタッフ・観客と、双方が一年望んで挑んだ作品、無事に上演できて本当に良かったと思います。
聞くところによると、大楽ではスタンディングオベーションが鳴り止まなかったとか。
コロナ禍で色々と騒がれていますが、演劇は不急かもしれないが不要ではないと信じて今回は締めさせていただきます。