現役13歳が演じる寺山修司|中国の不思議な役人【劇団☆A・P・B-Tokyo】

THEATRE

人生初の寺山修司、観劇してまいりました。

この記事はネタバレを含みます。ご注意ください。

作品の基本情報

中国の不思議な役人

主催:劇団☆A・P・B-Tokyo

作:寺山修司

演出:高野美由紀

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演劇  寺山修司 | Apbtokyo
2000年に旗上げ。「遊園地的劇空間」をテーマにした劇団

あらすじ

舞台は1920年代の上海。

クーデターの機運みなぎる市街には、略奪が日々、横行していた。

この街を支配する中国の不思議な役人は、不死なる存在と噂されていた。

 

役人は、死なないのではなく、死ねないのである。

 

死ねない役人は、この街のどこかにある「死ぬる場所」を探し求めて生きているのだ。

ある日、その眼前に現れた一人の少女。

数百年もの間、愛を知らずに生き続けてきた役人の眼前には 13歳の少女「花姚」。

 

誰かが言った…。

「役人の死に場所」…それは、少女の腕の中…

それも、無垢な少女の腕の中でしかない。

 

本当の愛を手に入れたとき、

中国の不思議な役人の運命はどうなるのか?歴史とは一体、どう移り変わるのか?

 

バルトークの舞台楽曲でも知られるこの作品を、

言葉の魔術師「寺山修司」の世界感で書き上げられた、有名作品。

「青ひげ公の城」の公演に続けて、バルトーク×寺山修司が炸裂する!!

 

2018年−今年限りで幕を閉じるアンダーグラウンド劇場「明石スタジオ」

これがこの劇場で観れる、寺山修司作品のLast Performance!

寺山修司没後35執念の第2弾、今、開演!!

公演日程・劇場

【日程】
2018
11月1日(木)11月6日(火) 

【劇場】
高円寺・明石スタジオ

〒166-0003 東京都杉並区高円寺南4-10-6

高円寺·明石スタジオ

キャスト(敬称略)

高野美由紀 / 渡邉結衣 / 横木安未紗

飯塚美花 / 華岡陽子 / 鈴木万里絵

稲垣桃華 / 齋藤志野 / 東 璃音

亀井理沙 / 宇羽野道 / 中本恵理奈

マメ山田 / 七朗 / 前田大椿

高橋弘幸 / 藤田龍太 / 来栖隆文

山口 翼 / たんぽぽおさむ / 浅野伸幸

スタッフ(敬称略)

作:寺山修司

演出:高野美由紀

画:智内兄助

撮影:横木安良夫

音楽:高木尋士

照明:大野桃子

音響:滝沢直紀

ヘアメイク:斉藤美幸

美術:VanityFactory

振付:高野美由紀

舞台監督:茨木五郎

感想

冒頭でも触れましたが、私、お恥ずかしながら寺山修司氏の演劇をこれまで観たことがなく、今回初めて観劇しましたが、初寺山がこのA・P・B-Tokyoさんでよかったな、と思える、そんな内容でした。

山本屋でもお馴染みの渡邉結衣ちゃん、飯塚美花さんが出演しています。

現役13歳という付加価値とその実力

今回メインヒロインを演じた渡邉結衣ちゃんは現役中学生の13歳。

本物の少女を起用することによって、作品の完成度がグッと増しているように思えます。

 

では、本物の少女であるという付加価値だけで起用されているのか?

そんなことはありません。

山本屋で何度も見ていますが、実力もちゃんと兼ね備えています。

しっかりと実力のある13歳が演じる娼婦という難しい役、圧巻でした。

 

序盤のあどけない少女の姿

中盤の娼婦として完成された姿

終盤で愛を知り、内面的に少し大人になった姿

それぞれ見事に演じ分けていたように思えます。

 

また、この作品を観て、内容的にも頭をよぎったのが、丸尾末広氏の少女椿でした。

渡邉結衣ちゃんの演じるみどりちゃんを観てみたい、彼女ならそれができるのではないかと思いました。

美術の美しさと効果的な空間の使い方

劇場に入って真っ先に目に飛び込んでくるのは薄暗い娼婦館の見事な舞台美術でした。

左右にいくつもの提灯がぶら下がり、極彩色に彩られた館。

そのボリューム故に、かなり客席の方までせり出している形になっていました。

さらに、舞台・客席間の空間もアクティングスペースとした上に、劇中で演者が観客に跨ってパフォーマンスをするシーンも。(私も跨られた一人でした笑)

 

正直客席は少し狭い印象を受けましたが、客席・舞台の境が曖昧なことで、より作品の世界観に没入することができる作りになっていたのが印象的でした。

 

また、物語終盤、舞台が崩壊するシーンでのギミックも迫力がありました。

まさか崩壊した後に戻すこともできるとは。。

元天井桟敷、萩原朔美氏のアフタートーク

終演後、寺山修司氏と共に天井桟敷の立ち上げを共にした萩原朔美氏を交えたアフタートークがあり、なかなか聞けない裏話や、寺山氏の人柄まで、有意義なお話を伺うことができました。

 

興味深かったのが、演出のト書きが実際に舞台上で実現可能かどうかを度外視しているというお話。

今回の作品で言うと、中盤のシーンで「鏡が火を噴く」と言うト書きがあるそうです。

実際に鏡から火を噴かせることはできないので、今回の公演では照明を落とし、いくつかの懐中電灯で鏡を照らし、それの反射光を利用しており、これは作中でも印象的な美しいシーンでした。

他にも、「客席の後ろから何百匹ものネズミが舞台に駆け上がる」等、到底実現できないような内容が書かれることがあるとのことでした。

 

寺山氏は自分の構想の中に物語の世界があり、まずは言葉に変えてぶち撒ける、そこからいかにして「舞台」というものに落とし込んでいくか、という作り方をしているのだと思います。

萩原氏は話の中で寺山氏を「詩的な人」であると表現していました。

言いたいこと・伝えたいことはシンプルでもそれの表現方法を遠回りさせる、私の好きなタイプの演劇です。

最後に

いわゆるアングラ演劇四天王の一人と呼ばれる寺山修司氏ですが、これをきっかけに他の作品も観てみたいと思わせてくれる内容でした。

今回そんな気持ちを抱かせてくれたA・P・B-Tokyoさん、カーテンコールで演者だけでなく、照明さん等、スタッフさんの紹介もしてくれたのがすごく好印象でした。

 

そして今回会場となった明石スタジオは今年いっぱいで閉館となります。

私は以前別の舞台で一度足を運んだことがありました。

最後に観る作品が寺山修司氏の演劇でよかったと思っております。

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