モテない男たちのプライドとその裏側|付きまとう褐色【演劇チーム 渋谷ハチ公前】

THEATRE
11/11(日)13:00の公演を観てまいりました。
再演ということもあり、流石の完成度でした。
この記事はネタバレを含みます。ご注意ください。

作品の基本情報

付きまとう褐色

主催:演劇チーム 渋谷ハチ公前

作・演出:高橋努

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演劇チーム渋谷ハチ公前(2018年リニューアル)渋ハチ
演劇チーム渋谷ハチ公前プロデュース公演vol.10「付きまとう褐色」作・演出 高橋努,浅草九劇,2018年11月7日〜14日 2007年に俳優の高橋努を中心に旗揚げ 渋ハチ

あらすじ

とある下町の世間には長屋と呼ばれている集合住宅の二部屋。

 

長男・次男、継母の連れ子の三男・四男の家。

一組の布団を横に敷き、四人で寝ていた子供時代。

母親が出て行き、二組使えるようになった。

父親が死に、三組使えるようになった。大人になると一人溢れた。

 

夫の帰りを待ち続けている女。

なんとか生活しているが、このままでは資金が底をついてしまう。

 

壁一枚を隔てた隣人。

どこか世間から遮断され、窮屈な世界に住み続ける住民達。

死んだ父、居ない母、抜け出せない四兄弟。

自由を感じず、不自由に固執し生きてしまう女。

この長屋に関わる人達の未来ある物語。

公演日程・劇場

【日程】
2018
11月7日(水)11月14日(水)

【劇場】
浅草九劇

〒111-0032 東京都台東区浅草2-16-2 浅草九倶楽部 2階

浅草九倶楽部/浅草九劇
浅草九倶楽部(劇場とホテルの複合施設)は、エンタテインメントの聖地「浅草」を拠点に「エンタテインメントを育む」プロジェクトです。浅草から世界へとつながるエンタテインメントの渦のど真ん中を目指します。浅草九劇は、人と情熱とエンタテインメントを巻き込む劇場であり、才能と熱量に溢れたエンタテインメントを発信していきます。

キャスト(敬称略)

上野なつひ / まつながひろこ

是近敦之 / 成松修 / 長尾卓磨 / 大塚ヒロタ

石田将士 / 植木祥平 / 大対源 / 田浦傑

スタッフ(敬称略)

作・演出:高橋努

照明:石塚美和子

音響:井上直裕 / 田中亮大

舞台美術:田中敏恵

舞台監督:甲賀亮

舞台監督監修:松下清永+鴉屋

宣伝美術:佐藤健太郎

制作:井口友希 / 冨樫舞

企画・制作:演劇チーム 渋谷ハチ公前

感想

今回の「付きまとう褐色」ですが、約5年半を経ての再演とのことでした。

私は初演を観ていないので、初演と比べてどうだったか、という話は書けませんが、作品としての感想を綴って行きたいと思います。

具象舞台と抽象的な演出

今回、舞台美術もしっかりと組まれ、基本的には具象で構成された内容ですが、心理描写で砂が降ってきたりと、アクセント的に抽象的な演出が一部盛り込んでありました。

個人的な好みとして、ミニチュアやジオラマを見ている感覚になれる具象舞台を見るのは好きなのですが、演出としては全てその場にあるもので描かれるため、考える余地があまり無いものが多く、そういった意味での面白みは少し減ってしまうことが多いです。

その点、今回の作品は具象と抽象のバランスがよく、視覚としての楽しみもあり、考える楽しみもありました。

本火を使用した実際の料理とその匂い

作中で、ガスコンロを使用して実際に料理を作るシーンがいくつか出てきます。

本火を使用して実際に料理を作るのは具象の醍醐味と言えるでしょう。

 

作中で、四兄弟の父親が作った目玉焼きを牛丼に乗せる回想シーンがあります。

そこだけ切り取るとなんの変哲も無い日常風景ですが、それを食べる兄弟はとても幸せそうな顔をしていました。

普段虐待とも言える扱いを受けている中、数少ない優しい父親の記憶を描いている、特に印象的なシーンです。

目玉焼きの焼ける音と、牛丼に乗せている時に客席まで香ってくる目玉焼きと牛丼の香りに思わず涙してしまいました。

 

この香りが演出としてとても効果的な役割を担っています。

匂いと記憶というのは密接なつながりがあり、これをプルースト効果と呼びます。

回想シーンでこの香りを漂わせることで、唯一とも言える「父親の優しい姿」という思い出をうまく描いていたように思えます。

扉を隔てて同時進行する会話

今回の物語の舞台はある一軒の長屋です。

建物の裏には、他の部屋からも繋がっている庭が広がっています。

部屋の中で会話をする人、裏庭で会話をする人、それぞれ同時に会話が進むシーンがいくつか存在します。

主軸となる会話をメインで聞かせて、その他の会話は小声で進行する、というものではなく、どちらも同じ音量で同時に進行しているため、それぞれ同じ時が流れていることを感じさせる演出でした。

最後に

女っ気の無い男四兄弟のむさ苦しい感じが凄くリアルで、役者自身の人柄を感じさせます。

上野なつひさんの醸し出す人妻感、若さはあるのにどこか艶っぽい雰囲気もとても魅力的でした。

全体的に登場人物の一挙一動にしっかりと動機を感じられる内容だったと思います。

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