観客が「僕」の人生に介入する舞台|エブリ・ブリリアント・シング【佐藤隆太】

THEATRE

今更ですが、新年のご挨拶をしておりませんでした!

みなさま、明けましておめでとうございます。

2010年代が終わり、2020年代という新しい時代の幕開けです。

新年初の観劇は佐藤隆太さんの一人芝居、エブリ・ブリリアント・シングでした。

特殊な舞台演出が話題となり、世界中で公演されている人気作品です。

この記事はネタバレを含みます。ご注意ください。

作品の基本情報

エブリ・ブリリアント・シング

主催:東京芸術劇場

原作:ダンカン・マクミラン、ジョニー・ドナヒュー

翻訳・演出:谷 賢一

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あらすじ

僕が7歳の時に、ママが入院した。どうやら、生きることが切なくなってしまったみたいだ。

僕はママを勇気づけようと、ステキなことやステキなものを、ノートに書き出してみた。

1番 アイスクリーム
2番 水鉄砲合戦
3番 寝る前に見るテレビ
4番 ……

そして1000番まで集まったら、ママは、きっと元気になる!そう信じて。

そんな子ども時代を過ごした少年が、大人になっても、ステキなことを書き続けている。

それは……。

公演日程・劇場

日程

東京公演:2020年1月25日(土)〜2月5日(水)
新潟公演:2020年2月8日(土)〜2月11日(火)
松本公演:2020年2月15日(土)〜2月16日(日)
名古屋公演:2020年2月18日(火)〜2月19日(水)
大阪公演:2020年2月22日(土)〜2月23日(日)
高知公演:2020年2月29日(土)〜3月1日(日)

観劇日

2020年1月26日(日) 13:00

東京公演劇場

東京芸術劇場 シアターイースト
〒171-0021
東京都豊島区西池袋1-8-1

新潟公演劇場

りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館・劇場
〒951-8132
新潟市中央区一番堀通町3-2

松本公演劇場

まつもと市民芸術館 特設会場
〒390-0815
長野県松本市深志3-10-1

名古屋公演劇場

名古屋市千種文化小劇場
〒464-0858
愛知県名古屋市千種区千種三丁目6番10号

大阪公演劇場

茨木市市民総合センター センターホール
〒567-0888
大阪府茨木市駅前四丁目6番16号

高知公演劇場

高知市文化プラザかるぽーと 大ホール
〒781-9529
高知県高知市九反田2-1

キャスト(敬称略)

佐藤隆太

スタッフ(敬称略)

美術 : 松岡 泉
証明:松本大介
音響・音響操作:清水麻理子
スタイリング:勝見宜人
ヘアメイク:白石義人
舞台監督:林 和宏
演出部:伊藤智史、小島恵三子、涌井一義、板倉真美
照明操作:桐山詠二
ピアノ指導:尾藤万希子
歌唱指導:加耒 徹
演出助手:美波利奈
小道具:高津装飾美術
衣装協力:quadro、GARMENT REPRODUCTION OF WORKERS
運搬:マイド
宣伝:ディップスプラネット、藤田志麻樹、斉藤沙知子、井東希美
アーティストマネジメント:松本あき子、杉原大平
制作進行:横井佑輔、坂井加代子
製作:石田 覚(りゅーとぴあ)、鶴岡智恵子(東京芸術劇場)
委託プロデューサー:穂坂知恵子
企画プロデューサー:内藤美奈子(東京芸術劇場)
企画:東京芸術劇場
製作:りゅーとぴあ新潟市民芸術文化会館

感想

今回の作品は、2013年にイギリスで公演された作品の日本初上演となります。

また、この作品の大きなポイントとして、観客参加型の作品であるという点が挙げられます。

今回の感想はそれを踏まえた上で進めていきたいと思います。

「僕」の人生に観客が介入するという逆フォレストガンプ

前述の通り、この作品は観客参加型で物語が進んでいきます。

開演前に佐藤隆太さん本人から、70枚を超える紙が1枚ずつ客席に配られ、作中でそれを読み上げる、そして時には舞台上に上がり、佐藤隆太さんとのちょっとした掛け合いを行う等、面白い手法で作られた作品となっています。

掛け合いを行う際は、基本的には決められたセリフや動きを観客が演じることとなりますが、一部台本の無いエチュードのような部分も存在します。

もちろん、物語の主軸が変わることはありませんが、指名された観客の反応次第で無限の可能性を秘めた内容となっていました。

二度と同じ内容になる事は無いので、何度観ても楽しむことができる内容だと思います。

 

突然ですが、皆さんはフォレストガンプという作品をご存知でしょうか?

トムハンクスが主演を務めた映画で有名ですが、この作品には我々の知っている様々な歴史的事象に実はフォレストガンプという男が関わっていた、という内容が含まれています。

フォレストガンプの場合、我々の知っている歴史に 主人公が 介入していくのに対し、今回の場合は主人公の人生に 観客が 介入している形となる様子を観て、今回の作品は逆フォレストガンプだと感じました。

文字通り、観客と一体になって作りあげられた作品であると思います。

「どうして?」のニュアンス

作中で子供時代の主人公が父親の車に乗り、どの言葉に対しても全て「どうして?」と聞き返すシーンがあります。

始めのうちは、

「シートベルトを締めなさい」
「どうして?」

「シートベルトを締めないと危ないからだ」
「どうして?」

といった感じに、よくある子供の質問責めから始まるのですが、だんだんと

「お母さんは病院にいるんだ」
「どうして?」

「お母さんはよくないことをしたんだ」
「どうして?」

といった具合に物語の深いところへと入り込んでいきます。

この時、実は少年時代の主人公を観客が演じ、どのセリフに対しても全て「どうして?」と聞き返しています。

もちろんお客さんは芝居の経験の無い人がほとんどで、私が観た回に指名されていた方も経験の無い方だったと思いますが、「どうして?」のニュアンスは素晴らしいものでした。

前半の「どうして?」と後半の「どうして?」はニュアンスも違い、同じセリフではありますが、「演じる」となるとなかなか難しいものがあると思います。

以前「アイスとけるとヤバイ」の感想でも書いた通り、初めてを「演じる」のではなく、初めてで「いる」ことにより、この絶妙なニュアンスを、芝居の経験がない人でも出すことができているのだと思いました。

終演後のポストトークで、演出の谷賢一さんが、「海外で初めて観た時に、単純なやりとりだけで深い所へと展開していくこのシーンに感動した」とおっしゃっていました。

私は前述した「どうして?」のニュアンスに感動を覚えましたが、それがあるからこそ、後半の深い所へと展開する際の空気のピリつきが生まれているのかな、と思います。

佐藤隆太という太陽の擬人化

ふざけた見出しですが、私は佐藤隆太さん太陽を擬人化したような人だと思っています。

とにかく底抜けに明るく、誰にでも笑顔を振りまいてくれる。

今回の作品は、原作が日本じゃないこともあり、少し芝居の演出が洋画風な、オーバーなイメージがありました。

佐藤隆太さんはそのノリを地で行ける数少ない俳優さんの一人だと思います。

多少オーバーに明るく振る舞っても、とても自然体で、普段もこういう方なんだろうなぁと思わせてくれる演技でした。

主人公に名前がないこともあり、まるで「佐藤隆太の人生」を自ら語っているかのような気分にさせられる内容でした

最後に

新年一発目からとても素晴らしい舞台を観ることができて幸せでした。

これをきっかけに、日本でも様々な俳優さんがやっているのを観てみたいですね。

登場人物や設定等、男女どちらでも成り立つ物語なので、女性が演じるパターンも観てみたいと思いました。

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