ここは檻の中か外か?|ミー・アット・ザ・ズー【悪い芝居】

THEATRE

2019年も終わりに近づいてきました。

なんだかんだこれが今年最後の観劇になりそうです。

おなじみ悪い芝居、ミー・アット・ザ・ズーの感想です。

この記事はネタバレを含みます。ご注意ください。

作品の基本情報

ミー・アット・ザ・ズー

主催:悪い芝居

作・演:山崎彬

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あらすじ

「過去には絶望を。未来には希望を。現在あるのは羨望のみです。」

何もかもが中途半端な街にデンと山があった。
山の頂にはかつて動物園があった。

あの夜、人間も動物もすべていなくなるという事件が起こる。

あれから8年、当事者でないすべての中途半端な人間たちは、もう動物のいないあの場所を、今も動物園と呼んでいる。
そして最初の朝を夢見て、最後の夜が明けるのを待っている。

個性あふれるキャストと演奏者を迎え、
冬のシアタートラムに解き放たれる悪い芝居は、
過去作『駄々の塊です』にセルフインスパイアされた、
絶望と希望と羨望の生演奏で彩られる”人面獣心再生劇”。

すべてのことが、起こる。ご期待ください。

公演日程・劇場

日程

2019年12月4日(水)~12月8日(日)

観劇日

2019年12月6日(金) 14:00

劇場

シアタートラム
〒154-0004
東京都世田谷区太子堂4丁目1番地1号

キャスト(敬称略)

【出演】
日比美思 / 藤原祐規 / 田中怜子 / 久保貫太郎
中西柚貴 / 潮みか / 東直輝 / 畑中華香 / 植田順平 / 山崎彬

【バンド生演奏】
ドラム:マルシェⅡ世 ベース:金澤力哉 ギター:岡田太郎
トロンボーン:ヤマモトショウコ ピアノ/キーボード:黒田玲兎

スタッフ(敬称略)

美術 : 竹内良亮
音響 : 谷井貞仁(ステージオフィス)、横田和也(LLC.ARTS)
照明 : 加藤直子(DASH COMPANY)
照明操作 : 山﨑佳代
舞台監督 : 川除学
衣装 : 植田昇明(kasane)
映像 : 松澤延拓
演出助手 : 藤嶋恵
美術助手 : 佐藤かりん
特殊小道具 : 進野大輔
技術 : 米田優
宣伝美術 : 樋口舞子
制作 : 阿部りん、畑中華香

感想

今回の作品は、2011年に公開された悪い芝居の過去作「駄々の塊です」の設定をベースに作られています。

私は残念ながらそちらは観ていないので、そういった意味では100%の楽しみ方はできなかったのだと思いますが、公式でも「再演とも続編ともまたちがう、完全新作」と謳っているとおり、単体として十分に楽しむことができました。

YouTubeは檻の中か否か

今回の要素として、

  • 動物園
  • 刑務所
  • 芸人
  • YouTube

という4つがあり、

見る側、見られる側、檻の中、檻の外

それぞれの立場が目まぐるしく変わっていきます。

お笑い芸人の孤村新年は、自分のファンであるYouTuber恋住闇と出会い、YouTubeという媒体で自身を売り込むようになります。

その後なんやかんやあり、動物園の檻に閉じ込められた妹を救うために奔走する彼は、傷害事件を起こして刑務所へ。

妹を檻から解き放つ為に自らが檻の中に入ることになってしまいます。

新年には、自分のお笑いを世間に理解してほしい、世界に発信したいという思いでYouTubeを始めますが、ある意味YouTubeという檻に閉じ込められているように見えました。

ちなみに、今回の「ミー・アット・ザ・ズー」というタイトルはYouTubeに初めて投稿された動画から来ています。

動物園の檻の外で撮影しているこの動画は、YouTubeの檻に10年以上閉じ込められているという見方もできますね。

見られているのか、見ているのか、檻の中なのか、檻の外なのか、そこの境界線が常に曖昧なまま物語が進んでいき、言い知れぬ不安感が続く作品でした。

映像の投影と照明の使い方

今回は、プロジェクションマッピング的な映像の投影が多く見られました。

作中の嵐の中での動物園のシーンは本当に雨が降っているように見えて見事でしたね。

悪い芝居ではおなじみのカメラの映像がリアルタイムで舞台に映し出される演出は今回のYouTuberの設定にもマッチしていてよかったと思います。

個人的に好きだったのが、新年の妹である孤村直が檻について話している時に、スポットライトで檻を表現している部分でした。

美術として檻があったり、映像の投影も出来た中、スポットという舞台的演出をすることで、彼女が話しているのが物理的な檻ではなく、精神的な檻に閉じ込められていることが表現されていたと思います。

芸人孤村ニューイヤー

藤原祐規さん演じる孤村新年山崎彬さん演じる今福輝一とのお笑いコンビ孤村ニューイヤーですが、いい具合に売れない芸人感が出ていてすごくよかったです。

万人受けはせず、あまり人気は無いのに新年本人はお笑いに対するプライドが高い、というのも凄くリアルで説得力のある人物像でした。

最後は二人の漫才でフェードアウトしていって終わりますが、ネタをやっているときは二人とももの凄く幸せそうな顔をしているのを見ていて少し泣きそうになってしまいました。

あのシーンは、客席も含め、会場全体が作品の一部となった瞬間だったと思います。

最後に

今回は久しぶりにちょっとダークな悪い芝居が見れました。

ポップでカラフルな世界から、今回のようなダークな内容まで、振り幅の広い劇団さんだと思います。

20周年まで頑張って続けていけたら幸せですね!

悪い芝居15周年の締めくくりと当時に、私の今年の観劇もこれで最後だと思います、ということで今回はここまで。

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