メロメロの再演、見てまいりました。
初演に負けずとも劣らない面白さです。
作品の基本情報
メロメロたち
主催:悪い芝居
作・演出:山崎彬
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あらすじ
富士山あたりを境に東西戦争が起こり、分断された架空の日本。
その戦前と戦中と戦後の物語。
戦場ライブのさなか、武装した女子高生の放った銃弾がヴォーカルの身体を貫く。
その直後に身体から炎を上げ命を燃やした去り際は、
ロックバンド メロメロ を伝説に変えるには十分すぎる出来事だった。
あれから5年ーーー
音楽ライター・神谷ふりかけは、消息を絶ったメロメロの元ドラマー・雑味葉蔵のもとを訪ねる。あの日以来、葉蔵は自宅に引きこもり、ひたすらにドラムを叩き続けるだけの生活を送っていた。
泣くように響く葉蔵のドラムの波が音楽を覆いつくすその瞬間、
過去の歌声がその波に乗り、本当の伝説を語り始める。
転落と再生と転落のバンドサウンドに乗せて生き放つ、
前代未聞の移動しないロードムービー悲喜劇。
公演日程・劇場
【日程】
大阪:2018年11月14日(水)~11月18日(日)
東京:2018年11月21日(水)~11月25日(日)
【大阪公演劇場】
HEP HALL
〒530-0017
大阪府大阪市北区角田町5-15 HEP FIVE 8F HEP HALL
【東京公演】
東京芸術劇場 シアターウエスト
〒171-0021
東京都豊島区西池袋1-8-1
キャスト(敬称略)
渡邉みな(めがね) / 植田順平 / 中西柚貴 / 永嶋柊吾
山崎彬 / 東直輝 / アツムワンダフル
岡田太郎 / 小田龍哉 / 北岸淳生
潮みか / 畑中華香 / 佐藤かりん
スタッフ(敬称略)
美術:竹内良亮
舞台監督:大鹿展明
証明:加藤直子
音響:谷井貞仁
衣装:植田昇明
演出助手:藤嶋恵
特殊小道具:進野大輔
技術:米田優
演出部:川人早貴
Web:植田順平
宣伝美術:樋口舞子
宣伝写真:勝呂亮伍
制作:阿部りん・畑中華香・高橋ゆうき
助成:大阪ガス株式会社
主催:悪い芝居
共催:ナッポスユナイテッド
感想
この作品ですが、2016年に公開され、OMS戯曲賞を受賞した演目の再演となります。
今回主催の悪い芝居は私のお気に入りの劇団のひとつでもあり、初演も観劇しております。
再演の感想ということで、初演との違い等を踏まえた感想になりますが、ご了承くださいませ。
内面的に細い生恥つづきと太い生恥つづき
初演・再演でいくつかキャストに変更がありましたが、やはり一番の変更点は、メインヒロインである生恥つづきのキャスト変更です。
初演ではNMB48の石塚朱莉さんが演じていましたが、今回はYouTuberとして活躍中の『めがね』こと渡邉みなさんが初舞台で演じています。
初演のつづきはいい意味であざといかわいさ、天真爛漫で底抜けの明るさをもっていました。
ですが、内面的にどこか細く、物語中盤のボーカルの蒔田終を自分の手で撃つことで精神的に塞ぎ込んでしまう展開は、ついに壊れてしまった、という印象でした。
対して今回の渡邉みなさん演じる生恥つづきは、芯が太く力強い女の子に仕上がっていました。
それ故に前述のシーンでは、あんなに元気だったつづきがこんなにも簡単に折れてしまった、というような少し違った印象に変わったように思えます。
精神的に死んだ生恥つづきの表現
前述の通り、大好きだったバンドのボーカルを自分の手で撃ってしまったつづきは、自分の家に引きこもり、精神的に死亡したと言える状態になります。
その後、物語は音楽ライターの神谷ふりかけと元メロメロのドラマーである雑味葉蔵を中心に、かつてのバンドメンバーを再度集めることになりますが、その各シーンでは、傍らにつづきの姿が常に登場しています。
実際にはその場にいないはずの彼女が、みんなの会話を楽しそうに聞き、生き生きとリアクションしているその姿は、精神的に死んだ彼女の魂が亡霊のようにそこに佇んでいるかのような、そんな印象を受けました。
劇中歌の歌詞とループの匂い
作中では伝説的バンド、通称メロメロの曲が実際に生演奏で歌われるシーンが数多く存在します。
そんな中、戦前の初期作として、ボーカルの蒔田終が自分の体にナイフを突き刺しながら歌う『あ痛い』と言う曲でこんな歌詞があります。
無表情の兵隊さんが僕に銃を向け撃ちぬいたよ
僕のハート 君を思い出す
ベイビーユーアーマイキュートアーミー
あー今すぐ君に会いたい
これはあくまで個人的な考えですが、この物語の世界がループしていると考えると面白い推察ができます。
一行目の銃を向け撃ちぬいたという部分は言わずもがな、この後に起こる生恥つづきに撃たれるシーンを指し、その後の君を思い出す、の部分で言う「君」は前のループで撃ったつづきを指しているのではないか、という考えです。
今回再演という形で再度メロメロたちを上演したわけですが、これは再演であると同時にループした2周目の世界、さらに言えば各公演ごとに物語がループしていると考えると、再演の千秋楽の時点で物語は20周以上繰り返されている、と言うことになります。
と言うことは、この曲が作られた時点ですでに2周目以降であり、つまりは初演の初日はもう2周目以降という、卵が先か鶏が先か、のような矛盾が生じる中々面白い考えができるわけです。
更に、それを踏まえた上で考えると、中学時代にバンドを結成した回想シーンで、
「最後に歌う曲のタイトルは『ライフイズラブリー』に決めている」
という会話がありますが、これもつづきに銃で撃たれる寸前に最後に書いた曲と言う前世の記憶が無意識に呼び起こされているのでは、と取れるわけです。
最後に
今回再演ということもあり、初演の時よりも深いところまで考えながら観ることができました。
(ループの話は少し変な方向に考えすぎた気もしますが笑)
段々と箱が大きくなってきている悪い芝居に今後も注目です。